新しい免疫療法による治療

 免疫の仕組みを利用した免疫療法は、手術、抗がん剤、放射線に次いで、がんの第4の治療法として期待されています。昨秋、皮膚がんの一つ悪性黒色腫(メラノ-マ)の新薬が、国内で発売されました。メラノ-マは皮膚がんの一種で、皮膚の色素をつくる細胞やほくろの細胞ががん化するものです。毎年約1400人が発症し、患者の多くは6070歳代です。メラノ-マの治療は、腫瘍を切り取る手術が一般的で、ほかの臓器に転移している場合は、抗がん剤が中心となります。しかし、転移性メラノ-マに対しては、従来の抗がん剤治療でも延命効果を期待できませんでした。
ニボルマブは、手術ができないメラノ-マの治療薬として、昨年7月に承認されました。抗がん剤や分子標的薬のようにがん細胞を直接たたくのでなく、がん細胞の影響で抑えられていた免疫力を活性化させる薬です。がんができると通常、免疫の実働部隊のT細胞ががん細胞を死滅させます。がんは攻撃から逃れるため、自身の細胞の表面にPD-L1と呼ばれるたんぱく質を出し、T細胞のPD-1と結びつきます。すると、T細胞の攻撃にブレ-キがかかり、がん細胞は増殖を続けるようになってしまいます。ニボルマブはこの結合に割って入り、T細胞のブレ-キを解除して、がん細胞への攻撃を再開させる作用があります。また、肺がん、胃がんや腎細胞がんでも、この薬の効果や安全性を調べる治験が始まっています。

(2015年4月28日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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