人工妊娠中絶の地域格差

 わが国では、年間100万件の出生がありますが、人工妊娠中絶は約20万件で、大体出生5に対し1の頻度で行われています。わが国における人工妊娠中絶には、地域格差があることが知られています。都道府県別の人工妊娠中絶は、関東地方や中部地方、近畿地方などで低く、北海道や東北、それから中国、四国、九州、沖縄で高いということが分かっています。東日本では、7.77、西日本8.58と有意に西日本が高い、いわゆる西高東低という結果になっています。
 県民所得との関連を見ると、東京を別として、所得が高ければ高いほど、中絶率は低くなります。また、高校就職率が高ければ高いほど、中絶率も高くなります。逆に大学進学率が高ければ高いほど、中絶率は低くなっています。母子健康手帳をもらうときに婚姻届を出していないカップル、いわゆる「でき婚」率が高ければ高いほど、中絶率も高くなっています。また、20代の男女の未婚率、結婚していない率が高ければ高いほど、中絶率は低くなります。出産年齢が高ければ高いほど人工妊娠中絶率は低く、カップルが早く結婚している都道府県は、中絶率が高いという結果が得られています。
 わが国における人工妊娠中絶は減少し続けており、最近7年間では約30%減少をしています。西高東低の地域格差の理由としては、所得・未婚率・高校就職率・大学進学率との関連があげられます。

201551日 家族と健康)
(吉村 やすのり)

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