生殖医療管見-Ⅷ

さいごに
 時空を超えた絶対的な倫理というものはなく、倫理観とは時代とともに、また技術開発とともに変化するものである。医療技術の進歩は新たな倫理的問題や社会的状況を産みだすことになる。医療における倫理問題は科学技術の進展と不可分であり、大きな影響を受けることになる。第三者を介する生殖補助医療においては、生まれた子どもの法的地位保全は重要な問題であり、親子関係を含めた新たな社会的状況を考慮しなければならなくなる。子どもは医療行為がなされる時点では現存せず、問題が顕在化する時の社会一般の状況や子の家庭的環境などは予想できないため、事前のリスク評価は困難である。そのため、考え得るあらゆる事態を想定した慎重な議論の後、子の福祉を最優先するような法益が考えられなければならない。体外受精の医療技術の進歩は素晴らしいものがある。しかし、どのように発展させていくかは人間の智慧が問われるところである。

(吉村 やすのり)

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