がんと妊孕性―Ⅱ

胚の凍結
一方、胚の凍結は、現在生殖補助医療(ART)において、安全性ならびに有効性がほぼ確立した技術となっており、ARTで生まれた子どもの7割以上は、凍結胚の移植によるものです。年間ARTによって生まれた子どもの38千人の内、27千人は凍結胚によって誕生しています。既婚者であれば、がん・生殖医療においても、第一選択となりうる重要な技術です。しかしながら、胚の凍結保存には、排卵誘発剤による卵巣刺激がほぼ必須であることより、悪性腫瘍の治療の開始が遅れることが問題となります。卵巣刺激後、採卵するまでには少なくとも34週間を要するため、その間原病の治療の開始を待たなければなりません。また、乳がんなどのホルモン依存症腫瘍の場合、卵巣刺激による一過性の血中エストロゲンの上昇が、腫瘍の発育を助長するなどの悪影響を与える可能性も否定できません。現在では、そのリスクを避けるための卵巣刺激法として、エストロゲンを上昇させないアロマタ-ゼ阻害剤の併用が推奨されています。

(吉村 やすのり)

 

 

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