がんと妊孕性―Ⅲ

卵子の凍結
 未婚女性の場合には、未受精卵の凍結が行われます。近年、超急速凍結法、いわゆるガラス化凍結法の開発により、良好な妊娠成績が得られるようになってきており、もはや未受精卵子の凍結は、臨床研究の段階から臨床応用の時代に入ってきています。凍結卵子を用いて、すでに約千例の出産が得られており、新鮮卵子と比べて臨床成績に差がないと考えられるようになっています。しかしながら、これまでの未受精卵子の妊娠成績に関する報告は、卵巣予備能が良好な若年の卵子ドナ-の症例に限られており、がん治療後の未受精卵子の妊娠成績ではありません。融解した卵子1個あたりの妊娠率は510%前後であり、40%以上に達する凍結胚に比べると、必ずしも良好とは言えません。胚の凍結とは異なり、パートナ-がいなくても、卵子凍結ができることはメリットですが、凍結胚と同様に排卵誘発剤による卵巣刺激が必要になるため、やはり治療の開始が遅れることがデメリットとなります。

(吉村 やすのり)

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