日本創成会議提言に憶う―Ⅰ

老いる東京

 日本創成会議の提言によれば、急速な高齢化で医療や介護の体制が追いつかない、老いる東京の姿が浮き彫りにされています。東京圏に住む75歳以上の人は、今後10年間で175万人も増加すると見積られています。現状では国も東京都も有効な対策を打ち出せていませんが、創生会議は地方移住が有力な解決策になると提案しています。東京への一極集中が、結果的に東京での高齢者の膨大な集積につながり、東京圏での介護施設の不足を招くことになります。
 東京圏で、2025年にかけて75歳以上の後期高齢者が急増し、医療・介護施設が不足する事態に陥ります。まずは医療・介護の需要を抑えていく取り組みが必要となります。国や地方自治体のみならず、企業や個人が様々なレベルでこれまで以上に病気や介護の予防に力を入れ、健康寿命を延ばしていくことが大切になります。気になるのは、提言が東京圏の高齢者の地方移住に力点を置いていることです。高齢者が移住した先の自治体は、国民健康保険や介護保険で地元負担が増すことになってしまいます。また医療を支えるべき医師が、地方に移住しなければならないことも考えられていません。いずれにしても現在の医療制度を抜本的に見直さない限り、絵に描いた餅です。

(2015年6月5日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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