日本創成会議提言に憶う―Ⅲ

地方移住は果たして可能か

 東京では現在でも、特別養護老人ホ-ムへの入居を待っている高齢者が4万人を超すといわれています。今後、ますます介護施設などの不足が深刻になります。その対応策として、地方への高齢者の移住策が打ち出されました。調査によっては、地方への移住を検討したいという人は中高年齢層でもかなりみられます。しかし、実際に移住できるかといえば、家族の理解や仕事の確保など色々な問題を抱えているのが実情です。
 政府や自治体がまずすべきことは、高齢者が地域で暮らし続けられるようにすることです。生活習慣の見直しを助言したりして健康寿命を延ばしたり、住宅について介護を受けられるように人材の確保に努めることが大切になります。そのためには、都会での生活と同程度の医療が受けられることが重要な要因となります。地方への移住を促す前に取り組むべき課題は、たくさん残されています。地方交付金を出すことにより、土地を造成したり、施設を建設したりすることはできますが、それに伴う人材誘致ができないので、結局失敗した事例は数多くあります。医療や介護を担うのは、都会でも地方でも人です。地方創生との名目で交付金を出しても、都会の高齢者の地方移住がおこるとは思えません。政府も地方に施設整備を促す前に移住の障害になっている背景には何があるのか、まずそこから慎重に検討すべきです。

(吉村 やすのり)

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