出生率の低下に憶う

 1人の女性が生涯に産む子どもの数の推計である合計特殊出生率は、前年より0.01ポイント低い1.42に低下しました。さらに深刻なのは出生数です。前年より約26千人減り、過去最少の1003532人に減少しました。2016年には確実に100万人を割る事になります。1974年に比べ40年間で半減という落ち込みぶりです。長年の少子化により、性成熟期にある年代の女性の人口そのものが減っています。それに合計特殊出生率の低下が重なれば、子どもの数は大きく減ることになります。
 少子化の大きな要因は、未婚の人の増加と結婚や出産年齢の上昇によります。30代前半では、男性の2人に1人、女性の3人に1人が結婚していません。結婚や出産はもちろん個人選択の自由ですが、収入の少なさや将来の見通しの不確かさが、若者にとって家族を持つことの壁になっています。わが国においては、婚外子の割合は2%前後であり、結婚しなければ子どもを産まない状況にあります。収入の少なさや将来の見通しの不確かさが若者にとって家族を持つことの壁になっています。若い世代には無職や、非正規社員として働く人も多いため、新規就業や処遇改善、正社員への転換が進むようにする政策が、大事な少子化対策につながります。家庭の収入を安定させるためにも、女性の力を生かすためにも、共働きは当たり前になってきています。しかし長時間労働の職場では、働きながらの子育ては難しくなります。女性が働きながら子育てができるような環境づくりが大切となります。時間ではなく成果で評価し、柔軟な働き方を用意することが必要になります。
 2008年には、出産育児一時金が38万円より42万円に増額されました。また、妊婦健診が14回まで公的助成されるようになり、妊娠時の経済負担の軽減により、2005年に1.26と最低であった合計特殊出生率も微増し、2013年には1.43まで回復していました。しかし、9年ぶりに出生率は低下しました。これを回復させるためには、高齢者への給付に偏っている社会保障の財源の配分を見直し、子育て支援などを充実させることを真剣に議論しなければなりません。子どもへの投資は、将来の社会保障制度の支え手を増やすことにつながります。これを丁寧に国民に説明し、豊かな高齢者には一定の負担を求めることが必要です。少子化対策は、待ったなしの状況です。いずれにしても強い政治のリ-ダ-シップが要求されます。

(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。