医療物資の自給率の低さ

 中東の混乱が長引き、医療に欠かせない石油関連製品の確保に不安が広がり始めています。調達難の根源には医療物資を輸入に頼る構図があります。厚生労働省の薬事工業生産動態統計調査によると、2024年に医療用手袋の輸入額は416億円で、国内生産額は3億円にとどまっています。99%超を海外に依存していることになります。透析用のチューブは輸入の264億円に対して国内生産は約500万円と、やはり大半が海外頼みです。

 カテーテルや注射器なども含めて多くの医療物資は、ナフサ由来のプラスチックを使っています。プラスチックを使わない医療機器や物資はほとんどありません。必要量は確保できても、価格は上昇してきています。メーカーからは、手袋や手術用のガウンに関しては数カ月後の値上げに踏み切ると思われます。保険医療の対価は診療報酬という公定価格に基づいており、物資が高騰しても、価格転嫁は困難です。

 医療物資は、新型コロナウイルス禍でも供給不安が高まりました。マスクなど一部では生産の国内回帰の動きがありましたが、収益の維持は難しく、多くが事業継続を断念しています。政府は、医療物資などの供給維持に向け、東南アジア各国の原油調達に総額100億ドル(およそ1.6兆円)の金融支援に踏み切ります。医療物資が途絶えれば、国民生活が成り立たなくなります。中東の混乱は供給網の強化という課題を改めて突きつけています。

(2026年4月24日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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