一般的な太陽光発電は、太陽光を電気に変換する技術です。光を当てると構造や性質が変わる分子を使って、太陽光のエネルギーを分子内にため込むのが、分子太陽熱エネルギー貯蔵(MOST)と呼ばれる技術です。米カリフォルニア大学などの研究グループは、太陽光の熱を化学エネルギーとして蓄え、再利用する新たな分子技術を開発しています。
研究グループは、従来のMOSTのエネルギー効率を大幅に改善する新たな分子の開発に成功しています。紫外線によってDNAに損傷が起きるメカニズムに着想を得て、その際に起きるピリミドンを中心とした化合物と化学反応を応用しています。ピリミドン系の化学反応では、構成する原子の種類と数が同じでも、光や熱によって構造が歪むことで性質が異なる化合物に変化します。この異性体が高いエネルギーを持つ状態になります。
エネルギーの保存期間も最大3.4年(半減期)と見積もられ、蓄熱と放熱を約20回繰り返してもほとんど劣化しない耐久性も確認しています。エネルギーを多く蓄える分子ほど安定性が低くなり自然放電しやすいのですが、ピリミドン系はそのトレードオフを克服しています。
近年は気候変動対策やエネルギー安全保障の観点から、様々な方法で太陽エネルギーを利用する手段が再注目されています。既存の暖房をMOSTシステムに置き換えることができれば、温暖化ガスの大幅な排出減につなげられます。
(2026年5月19日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)







