医師の病院離れ

 病院で働く医師の負担が重くなっています。病床のない診療所は自由に開業でき、掲げる診療科も自由なため、病院からの転出が目立っています。都市部への集中と、地域や診療科の偏在も深刻です。日本全体では医師は増え続けています。2024年末で約34万人は20年前の1.3倍です。国は、大学医学部の定員で総数を規制していますが、勤務先や診療所の開業は自由で、診療科も自由に標榜できます。医師が増えても地域や診療科の偏在は解消していません。

 医師の病院離れは急速に進行しています。厚生労働省によれば、2024年末に病院で働く医師は約21万9千人で、2年前の調査より約700人減っています。減少は1979年に診療所の医師数を上回って以来初めてです。診療所の医師は約11万1千人と、約4,300人増えています。緊急時には特に激務となる病院を避け、負担が少ない美容外科などの診療所を選ぶ傾向が見られます。

 医師の地域偏在の原因として、医局制度の崩壊が挙げられます。医学部教授が、医局に属する医師を地方の関連病院に一定期間派遣する仕組みです。現在も大学病院は計約6万人を派遣し、地域医療を支えています。厚生労働省は、2004年に今後求められる総合的な医療を学ぶ機会を増やすため、新たな臨床研修制度を導入しました。専門的な大学病院は研修医が減って派遣機能が低下してしまいました。

 政府は偏在緩和のため医療法を改正し、4月からは知事は外来医師が多い地域で新規開業しようとするケースに、医師不足地域での医療提供を要請できるようになっています。しかし要請に応じなくても開業でき、自由開業制は変わっていません。都市部でも病院が多く医師が分散するため、勤務医の負担は重くなっています。働き方改革を実現するためには、医師の絶対数がいます。病院の集約化も必要となります。

(2026年4月25日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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