乳がんの治療に、周囲の細胞には影響が少なく、がん細胞を狙って放射線で破壊するホウ素中性子捕捉療法(BNCT)の導入が始まっています。治療は1回の照射で済み、患者の体への負担も少ないのですが、自由診療で治療費は高額となります。将来的な公的医療保険の適用も期待されています。BNCTは、頭頸部がんに限って保険が適用されています。いち早く導入した南東北BNCT研究センターが2016年から臨床試験を重ね、2020年に保険適用となっています。
BNCTは、点滴で体内に入れたホウ素製剤ががん細胞だけにたまる作用を利用します。中性子線を患部に照射すると、ホウ素と中性子の核反応で発生した粒子ががん細胞を破壊します。体表から6㎝以内の深さにある腫瘍を主なターゲットとし、多くは体表近くにできる乳がんに適しています。周囲で破壊されず残る免疫細胞が、死んだり弱ったりしたがん細胞の特徴を覚えて体中を巡り、離れた部位のがん細胞を攻撃することも期待できます。原則同じ場所に再照射できない通常の放射線治療と違い、再発しても照射できる利点もあります。

乳がんでは、2023年7月に世界で初めて江戸川病院が実施しています。臨床試験では7症例で有効性の確認ができています。国立がん研究センターも、昨春から胸部固形がんを対象に臨床試験を始めています。乳がんのほか、食道がんや肺がんなど胸部腫瘍全体への安全性を評価しています。

(2026年5月12日 東京新聞)
(吉村 やすのり)





