住友ファーマのiPS細胞を使ったパーキンソン病治療薬のアムシェプリが保険適用されました。iPS細胞薬が保険適用となるのは世界で初めてです。患者の自己負担は、高額療養費制度などで一定に抑えられます。年齢や年収によって異なりますが、年収が約370万~770万円の場合、自己負担の年間上限は53万円となります。治療対象となるパーキンソン病では、指定難病の医療費助成の対象になった場合、月数万円程度まで負担を抑えられます。
政府は、国家戦略としてiPS細胞に研究資金を投じ、技術の実用化を後押ししてきました。iPS細胞技術で日本が世界をリードすることで、国内の製薬企業が国際競争力を持てるようになります。今後も複数の再生医療製品が控えています。

再生医療は、これまで治療法が無かった病気を治療する手段となり得ます。プレシデンス・リサーチによれば、世界の再生医療市場は、2026年の536億ドル(約8.5兆円)から2035年には約348億ドルに増加します。一方で新薬開発には10年以上かかり、必要な研究開発費は1000億円以上とされています。産業の観点からは一定の価格が必要となりますが、患者にとって相応の価値があるかどうかも判断する必要があります。
再生医療にかかる費用を誰がどう負担するかも課題となります。再生医療は細胞の品質管理コストが高いことなどから高額になります。普及が進めば医療費増を招きます。2023年度の国民医療費は48兆円と、10年前から2割増えています。再生医療の治療薬の保険適用は、国民医療費の増加に拍車をかけるのではないかと懸念され、有効性の高さと持続性を冷静に見極めることが大切です。

(2026年5月21日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)





