2023年に岸田文雄政権は、異次元の少子化対策として加速化プランを策定しました。異次元の少子化対策に掛かる年3.6兆円のうち1兆円を賄うため、子ども・子育て支援金制度を創設しました。公的医療保険料に月数百円が上乗せされる形で、支援金の徴収が今年4月から始まりました。児童手当の拡充や妊婦への給付、育休制度の拡充などに充てられます。
これまでの政府の少子化対策は、子どもがいる人たちがメインとなっています。しかし結婚した夫婦が持つ子どもの数はさほど減っていません。充実させるべきなのは結婚前の若者支援です。日本は未婚で出産する人が少なく、婚姻数の減少は出生数の減少に直結します。経済的な不安や将来への見通しが立たないことから、結婚に踏み出せない若者が多くなっています。
日本の社会保障は高齢者中心であり、医療、介護、年金、子育て支援などにかかる社会保障給付費は、2025年度で140兆7000億円に上ります。病気や障害といった個人の努力だけでは対応が難しい生活上のリスクは、高齢期で起こることが多いと考えられていましたが、今の社会では人生前半にもリスクがあります。社会保障における若者たちの負担感は大きく、出生率の低下や人口減少をさらに加速させる悪循環に陥り、社会保障制度の維持が難しくなる可能性があります。
かつての会社や家族が担っていた支え合いの機能は弱まっています。個人がこれまでより自由度高く自分の人生をデザインする時代になっています。結婚前の若者を支援するような社会保障にしていかなければなりません。

(2026年6月4日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)





