大腸がん手術後の排便障害

 大腸がんは、日本人に最も多いがんで、結腸にできる結腸がんと肛門に近い直腸にできる直腸がんに分類されます。治療には手術や抗がん剤、放射線などがあります。大腸がんのうち3~4割を占める直腸がんで、手術後の課題として注目されているのがLARS(低位前方切除後症候群)と呼ばれる排便障害です。

 便を一時的にためる役割を果たす直腸が手術で切除されることなどが原因と考えられ、頻便や便失禁などの症状があります。腸管の働きの変化も影響し、残便感といった便秘症状に悩むこともあります。手術してから半年ぐらいまでの症状が一番ひどく、1年から2年かけて徐々に改善していきます。人工肛門(ストーマ)を閉じた後に悩む人も少なくありません。

 LARSへの注目が高まっている背景には、直腸がんも含めた大腸がんに対する手術や抗がん剤などの医療技術の進歩があります。治療成績が上がり、治療後のQOLの向上に以前よりも目が向けられるようになっています。手術でがんを治療でき、肛門も残せて良かったと外科医は考えがちですが、患者さんのその後の生活にまで目を向ける必要があります。

 治療は症状に合わせた薬物療法のほか、骨盤底筋トレーニングなどのリハビリ、排便機能にかかわる仙骨神経に弱い電流を流して機能の改善を図る仙骨神経刺激療法などがあります。ストーマを閉じた後に、排便障害が辛く、治療しても改善しないといった場合には、もう一度ストーマに戻るという選択肢もあります。ストーマに戻ることで、旅行やスポーツを楽しめるようになる人もいます。

(2026年7月12日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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