サイバー事故の責任

 企業にとってサイバー事故は、事業停止や顧客離れを招き経営そのものを揺るがすリスクとなっています。米IBMの調査によれば、サイバー攻撃などによるデータ侵害で企業に発生する損失額は、2025年で1件あたり世界平均が444万ドル(約7億円)、日本の平均が365万ドル(約6億円)でした。サイバー攻撃の手口が巧妙化する中、どれだけ高度なシステムを導入しても被害リスクをゼロにはできません。

 企業が被害を受けるサイバー事故は急増しています。警察庁によれば、2025年中のサイバー犯罪の検挙件数は過去最多となっています。日本情報経済社会推進協会の調査によれば、過去1年間にデータ漏洩などのセキュリティインシデントを経験していないとの回答が22.7%で、約8割が何らかの事故の被害を受けています。

 米セキュリティー会社のKnowBe4の調査によれば、外部からの攻撃を受けた際に国内企業の従業員を懲戒処分にした割合が51%に達しています。メール誤送信など偶発的なミスであっても、49%が懲戒処分となっています。世界平均と比べて日本は6~7ポイント高くなっています。日本企業では、個人のミスや不注意を原因として処分することで対応を終えてしまうケースが多くなっています。

 企業には適切な教育やガイドライン整備、システム対策などを講じる責任があります。従業員の故意や過失の程度、企業側の対策状況などを十分に検討しないまま重い処分を科せば、懲戒権の乱用と判断されます。事故を起こした従業員が問題を隠したり、報告をためらったりする可能性が出てきます。処分だけでは根本的な再発防止につながりません。個人の責任を問うだけでなく、組織全体で学びを共有する仕組みづくりが大切です。

(2026年7月21日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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