差額ベッドの地域格差

厚生労働省の調査によれば、差額ベッド料が必要な個室から4人部屋までの病床数は、全体の約2割を占めています。20年前から約5ポイント上昇していますが、最近10年ではほとんど変化はありません。個室料は全国平均で8,322円、10年前から844円上昇しています。1万1千円超の室料がかかる個室は約2割ありますが、この比率にも大きな変化はありません。
2022年の都道府県別の個室料平均では、東京が1万9,770円と突出して高く、全国平均の倍以上となっています。もっとも低い秋田の3,538円の5.6倍で、首都圏や関西都市圏の高さが目立っています。平均が1万円超になるのは5都府県だけで、高額な差額ベッドは、東京を中心にごく一部の都市圏に偏在しています。

同じ個室でも様々なランクがあります。東京は、1万6,501~3万3千円で、差額料のかかる個室の3割強を占めています。23区内、さらに都心部の有名病院や大学病院の高さが際立っています。概ね3万~4万円台が相場です。大阪府の個室で最多なのは1万1,001~1万6,500円、同じく愛知県では5,501~8,800円で、それぞれ3割弱がこの価格帯です。
差額ベッド料が患者を悩ます背景には、公的保険から病院に支払われる診療報酬が十分でないという事情もあります。差額ベッドがないと経営が成り立たない病院は多くなっています。特に、都市部にある大学病院など高度医療を手がける医療機関では、人件費や材料費、設備投資などの費用がかさみ、経営は苦しくなっています。患者の選択の機会を広げるための差額ベッドが、病院経営に不可欠な収入源になっている状態があります。

(2023年9月8日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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