がん治療に対するmRNA医薬品の開発

新型コロナウイルスのワクチンで初めて実用化したmRNA医薬が、がん治療への応用が期待されています。新型コロナワクチンの場合、ウイルスのたんぱく質をつくるmRNAを投与すると、ウイルスのたんぱく質ができ、それを免疫が記憶することでウイルスが実際に侵入した際の感染防御などに役立ちます。
がん治療では、がんの目印となるたんぱく質である抗原をつくるmRNAを投与します。mRNAは自在に設計して簡単に合成できます。独ビオンテックの膵臓がんを対象にした初期の臨床試験で、再発を抑える可能性が示されています。膵臓がんは、国内のがん患者では6番目に多く、難治性で5年生存率は約12%です。安価なmRNAを使った併用療法で効果が期待されます。現在、様々ながんに対するmRNA医薬の開発が始まっています。
米ボストン・コンサルティング・グループの予測によれば、2025年には他の感染症のワクチンが登場する見込みです。2035年までは、mRNA医薬品市場の中心を感染症向けワクチンが占めるようになりますが、2035年には感染症のワクチンワクチンが半分を占め、がん治療向けが3割、残る16%が他の病気の治療薬と思われています。

 

(2022年9月16日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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