がん遺伝子パネル検査の保険適用拡大の必要性

がん患者の全遺伝情報(ゲノム)を調べて治療に生かすがん遺伝子パネル検査が、国の医療保険の対象になって4年が経過しました。パネル検査は、患者の組織や血液に含まれるがんに関連する遺伝子を数十~数百種類まとめて調べます。がんの遺伝子に特定の特徴があると効果的な治療薬あることが知られており、パネル検査で患者ごとに最適な薬が見つかる場合があります。
検査は、全国13カ所のがんゲノム医療中核拠点病院をはじめ計250超の病院で受けることができます。臨床医や遺伝カウンセラーなどが連携し、検査結果をもとに治療方針を決めます。2019年6月に国の医療保険の対象となり、2023年8月27日までに6万人超が検査を受けています。
しかし、実際に治療につながるケースは少なく、国立がん研究センターのがんゲノム情報管理センターによれば、検査した人のうち推奨された治療薬の投与まで至ったのは1割以下にとどまっています。公的保険の対象となる標準治療がない場合や、標準治療を終えた場合などが条件となっています。1回の検査が50万円以上と高額で、費用対効果の問題から範囲が限定されています。
第4期がん対策推進基本計画で、適切なタイミングでパネル検査などの結果を踏まえた治療を受けられるよう、既存制度の見直しも含め検討されています。早期に検査すれば治療に役立つ可能性が高まるという研究報告が相次ぎ、患者団体や医師が保険の適用拡大を求めています。

 

(2023年9月30日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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