がん遺伝子検査の増加

がん細胞に起きている遺伝子の変化を調べ、個々人に適した治療法を見つけるのが、がんゲノム医療です。国が適用範囲を広げれば、市場拡大が見込まれています。富士経済によれば、保険診療の対象が拡大された場合、国内市場は2030年に251億円と、2022年比で2.5倍に膨らむとされています。製薬業界で、特定の遺伝子変異に作用する治療薬の開発が活発なことも追い風となっています。
2023年にコニカミノルタや米企業の検査が、相次ぎ保険適用となっています。検査で特定したがんの遺伝子変異を狙い撃ちで治療する新薬開発が進む中、検査体制の構築が急務となっています。
がん遺伝子パネル検査の費用は50万円強です。同検査を巡り、より多くのがん患者を対象とするよう求める声が高まっています。現状は手術や薬物療法、放射線治療などの標準治療が終了した患者や、確立した治療法がない希少がんの患者に、検査の保険適用が限られています。
がん遺伝子パネル検査は市場の拡大が期待される一方、解決すべき大きな課題も残ります。検査の結果として推奨した薬を患者に投与した事例はわずか1割にとどまっています。網羅的に遺伝子変異を調べても、効果的な薬が存在しないケースが多いためです。検査へのアクセスを高めるためにも、検査と治療をより高い確率で結びつける取り組みが重要です。

 

(2023年10月20日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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