アルツハイマー病を知る―Ⅳ

その他・ケア
レカネマブの登場に期待は高まっていますが、投与対象は認知症全体からみれば、ごく一部にとどまります。認知症が進行するなどして、新薬の対象にならない多くの人への治療やケアも重要です。アリセプトなどの従来薬に加えて、過去の出来事を思い出して仲間と語り合う回想法や、一緒に歌う音楽療法なども、脳を活性化したり穏やかな気分になったりする効果が期待できます。
周囲の声かけや接し方次第で、妄想や不安といった症状の軽減も可能です。また、認知症があっても社会とつながり、安心して暮らせる環境づくりも求められます。6月に成立した認知症基本法では、認知症の人を含めた国民が、個性と能力を十分に発揮できる共生社会の実現を目標に掲げています。
認知症の発症リスクを下げることも必要です。英医学誌ランセットによれば、中年期に高血圧を治せば認知症の発症を2%減らし、高齢期に社会的孤立を解消すれば4%減らすとされています。対策可能な12項目全てのリスクをなくせば、認知症の発症を40%抑えられる可能性があるとされています。認知症を完全に予防することは難しいですが、適切な食事や運動に取り組むなどしてリスクを下げ、発症を遅らせることができるかもしれません。
90歳を過ぎると6割以上が認知症になります。超高齢化社会では、糖尿病や高血圧など老年期に起こるありふれた健康問題の一つと捉え、認知症を特別視しないという意識を持つことも大切です。

(2023年9月18日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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