コロナ後遺症の原因究明

新型コロナウイルスに感染した成人の約1割が後遺症を患うことが、日本と米国のそれぞれの調査で分かってきています。長期にわたって倦怠感や息切れが続き、職場に復帰できない人も出るなど労働損失が懸念されています。WHOは、新型コロナの感染から回復後、ほかの病気では説明できないものを後遺症と定義しています。慢性的な倦怠感、咳、息切れ、ブレインフォグとも呼ばれる記憶障害や集中力の低下、抑うつなど、症状は多岐にわたります。
厚生労働省の研究班によれば、感染後の成人の1~2割が、後遺症とみられる症状が2カ月以上続いたと答えています。米国の調査では、成人の14人に1人程度が新型コロナの後遺症に苦しんだ経験がありました。女性や貧しい家庭、地方の小さな町に住む成人は後遺症にかかる割合が高くなっています。
後遺症の実態調査や治療法を確立するため、NIHは、2021年からの4年間で11.5億ドル(約1,700億円)の資金を投じ研究を進めています。米ファイザーのコロナ治療薬パキロビッドを投与する治験を始めています。認知機能障害を訴える患者に対して、脳の訓練や電気的な刺激を与える治験も開始しています。
明確な治療法がない中、ワクチンが感染や重症化の予防だけでなく、後遺症も軽減できる可能性があることが国内外で報告されています。後遺症は、症状が重ければ、欠勤や離職の増加など社会的な負担にもつながる恐れがあります。米マッキンゼー・アンド・カンパニーは、コロナによって2022年に米国の労働力が0.8~2.6%損なわれたとの試算をまとめています。内訳の約15%は、後遺症の影響と見積もっています。

(2023年11月27日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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