ノーベル賞受賞時の年齢の上昇

文部科学省の研究所の調査によれば、ノーベル賞の自然科学3賞について、受賞時の平均年齢は69歳と、80年間で約16歳上昇しています。科学の進歩で学ぶ事項が増え、研究者になる年齢が上がっています。2020年代に自然科学3賞を受賞した人の平均年齢は69.4歳で、1940年代の53.8歳から15.6歳上昇しています。平均年齢は1980年代までは50歳代でしたが、1990年代には60歳を超え、2000年代に65.7歳、2010年代には69.1歳と上昇しています。
高齢化の原因として、受賞につながる重要な研究成果を出した年齢が1940年代の35.3歳から、2020年代には42.1歳と約7歳上がったことが考えられます。今は国際的にも博士課程の後に博士研究員などの任期付きの職に就くのが一般的で、常勤のポストは30歳代半ばまで得にくくなっています。腰を据えて、自分の思うような研究を始められる年齢が上がったために、顕著な研究成果を出すまでに年齢を重ねている場合が多くなっています。
また、受賞につながる重要な研究成果を発表できたとしても、受賞までにかかる平均年数が伸びたことでも関係しています。1940年代には18.5年でしたが、2020年代には27.3年と約9年長くなっています。世界で研究者の数が増加し、優れた成果も増えたことでノーベル賞を取るまでの待ち時間が長くなっています。
東西冷戦時代から各国は国力の源泉を担う科学技術力を高めるために研究者を増やしてきました。こうした背景が変わらない限り、受賞者の高齢化は今後も続きそうです。ノーベル賞受賞者が多い米国の平均寿命のデータをもとに調べたところ、物理学賞と化学賞で受賞時の年齢が、21世紀末に平均寿命を超えるとの結果が出ています。両賞の候補者は受賞前に亡くなる可能性が高くなっています。

 

(2023年9月8日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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