ヘルパーの高齢化

厚生労働省の調査によれば、介護職から離職する人が働き始める人を上回る離職超過が、2022年に初めて起きています。この傾向が続けば人手不足は一層深刻化します。高齢者数がほぼピークを迎え始める2040年度には約280万人の介護職が必要になり、2019年度比で69万人増やす必要があるとされています。



介護労働実態調査によれば、ホームヘルパーの平均年齢は54.7歳です。60歳以上が38.1%、70歳以上が13.5%を占めています。60歳以上が11.8%にとどまっていた20年前と比べれば、変化は顕著です。高齢ヘルパーが引退する5年後、10年後はどうなるのか、介護崩壊を懸念する現場の声があがっています。

介護職員のボーナスを含む昨年の平均賃金は、月29万3千円です。全産業平均の月36万1千円を7万円近く下回っています。これまでも介護職の処遇は見直されてきました。2012年度から賃金に一定額を上乗せする仕組みを制度化しました。2017年度までに月3万3千円、2019年度に一定の経験のある職員らを対象に月1万8千円、2022年度にはさらに月9千円を加算しています。こうした取り組みで、10年前に月額約10万円あった全産業平均との賃金差は縮んでいますが、依然として低い水準です。

このままでは人材不足で介護保険は崩壊してしまいます。危機を打開するには、介護報酬を抜本的に引き上げるしかありません。しかし介護報酬を大幅に引き上げれば、介護保険料や利用者負担も連動して大幅に増えてしまいます。処遇改善のための負担増が重なれば、経済的な事情で介護サービスを使えない高齢者が増えると思われます。負担増による介護崩壊とも言えます。負担増と連動させないよう、介護報酬とは別建てで財源を確保することを、真剣に検討する時期かもしれません。

(2023年12月7日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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