再び子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)の接種について

HPVワクチンは、これまで120か国以上で承認され1億7500万回以上接種されており、その有効性と安全性が世界的に認められています。豪州においてHPVワクチン接種プログラムの導入後、18歳未満の高度子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)の発症率が有意に減少したと報告され、また2013年6月、米国疾病対策予防センター(CDC)は、14~19歳女性のHPV 6,11,16,18型の罹患率がワクチン導入後56%減少したと報告しています。

 一方、安全性に関しては、本年6月13日に世界保健機構(WHO)の諮問委員会(GACVS)から声明が発表され、これまで販売された1億7500万回分のHPVワクチンにおいて安全性に大きな懸念がないことが再確認されています。国際産科婦人科連合(FIGO)も、本年8月2日の生命で、HPVワクチン接種に関する科学的根拠に基づき、現在使用されている2種のワクチンが安全であると結論し、HPVワクチン接種の継続をサポートすることを表明しています。これら2つの声明は、わが国で注目されている複合性局所疼痛症候群(CRPS)にも言及しており、現在までのデータからはHPVワクチンとの関連は不明確であると述べています。

 予防接種の有害事象として局所的な注射部位の痛みがよく見られますが、CRPSは一肢又は四肢に影響を及ぼす臨床的症候群で、最初の傷害の程度(小さな外傷であることが多い)と相応しない持続的な痛みを引き起こすことが特徴です。この四肢の慢性疼痛が、HPVワクチン800万本以上が販売された日本で報告されています。この件については集中的な調査が行われていますが、これまでに報告されているデータは、HPVワクチンが他のワクチンと比較して、明かにCRPSに関与していることを示唆するものではないとされています。また、入手可能なすべてのデータを確認した上で、FIGOの婦人科癌委員会およびFIGOの子宮頸がん予防分化会は、適切な対象集団にHPVワクチンの接種が継続されていることを指示するとしています。

 予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会の副反応症例調査の実施後に、速やかにHPVワクチン接種の再評価をすべきであると思われます。安全性を確認した上で早期再開されなければ、10年後には風疹と同様に、わが国は子宮頸がんの輸出国になってしまう可能性が示唆されます

(吉村 やすのり)

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