再生医療における有害事象

細胞を加工したものを患者に投与して組織の修復などを期待する再生医療は、国の薬事承認を受けた再生医療等製品のほか、公的医療保険の対象ではない自由診療として、歯やがんの治療、美容などの目的でも使われています。再生医療安全性確保法では、自由診療で再生医療を提供する医療機関は、国の認定を受けた委員会で事前に審査されます。患者に有害事象(治療との因果関係を問わない、健康上の問題)が生じた時は、委員会への報告が義務づけられています。
再生医療実施後、公的医療保険の対象の再生医療等製品では、正確な使用回数がわかる3製品ついての有害事象は、数百回の使用あたり120件ほどの報告がみられます。有害事象の報告頻度は3~4回に1件と、自由診療での頻度と大きな開きがみられています。国立がん研究センターは、再生医療における有害事象について調査しています。自由診療での有害事象の報告件数は、細胞の投与約10万回あたり10件未満にとどまっていました。
報告が義務づけられている内容はほぼ同じなのに、報告頻度に大きな違いがみられます。自由診療では適切に報告されていない疑いがあります。美容やがん治療の目的で、自由診療で提出される再生医療については注意が必要です。

(2023年12月13日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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