劇症型溶血性レンサ球菌感染症の増加

劇症型溶血性レンサ球菌は、溶連菌の一種のA群溶血性レンサ球菌で、一般には子どもを中心に咽頭炎を起こします。感染すると年齢を問わず稀に劇症化することがあります。30代以上が多く、高齢者が大半を占めています。初期の症状は咽頭痛や発熱、下痢・嘔吐などですが、多臓器不全や呼吸不全などを起こし、発症から数十時間で死亡することもあります。致死率は3割とされます。筋肉周辺の組織を壊死させることから、人食いバクテリアとも呼ばれます。
この劇症型が増加しており、2023年の患者報告数が過去最多となりました。病原性や感染力の高い株が国内でも確認されており、感染の拡大が懸念されています。国立感染症研究所によれば、2023年の患者数は941人で、過去最多だった2019年の894人を上回っています。劇症型を引き起こすのは、A群のほかG群など複数あります。A群の50歳未満の死者数が増え、2023年7~12月中旬に報告された50歳未満の患者の65人のうち、21人が死亡しました。
感染経路が不明なことが多いのですが、手足の傷口からの感染が知られています。手を洗ったり、傷口を清潔に保つことが大切で、傷口の腫れや痛み、発熱など感染の兆候が見られたら、すぐに医療機関を受診する必要があります。治療は、ペニシリン系の抗菌薬が第一選択ですが、劇症型で敗血症を起こすような病態では、免疫グロブリンを使用することもあります。5類感染症であり、診断した医師は、7日以内に保健所に届け出しなければなりません。

(2024年1月23日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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