医療のデータベースの連結化

医療においては、様々なデータベースが活用されています。認知症やがんのリスク、健康寿命などに影響する糖尿病治療では、検査や薬など電子カルテの情報を集めたデータベースの活用も始まっています。新型コロナウイルスの流行期には、日本国内の多くの医療機関で患者の診療が行われました。しかし、治療の効果や合併症などの情報は医療機関同士で十分に共有されず、薬やワクチン開発などで世界から後れをとりました。
全国に6つあるナショナルセンターと呼ばれる国立研究機関では、電子カルテの情報を集めたデータベースを構築する事業が、2020年4月から始まっています。患者の年齢・性別などの基本情報や病名、検査結果、処方情報、入退院の情報を匿名化し、メーカーが異なり書式が統一されていない電子カルテからもデータを集めることができるようになっています。
データベースの活用は、電子カルテにとどまりません。がんや難病、介護や障害福祉など公的なデータベースと連結させることで、様々な分析が可能になります。新型コロナのような感染症危機が起きた時、自治体が保有する予防接種や感染症発生届のデータと、医療機関の電子カルテがつながれば、ワクチンの有効性や感染症の重症化リスクの分析ができます。
国内で対象となる難病患者の数が分からず、開発のための臨床試験が始まらないことがしばしばあります。国に登録された難病患者の情報と、電子カルテを組み合わせれば、対象者数が把握できます。海外で使われている薬が、日本で開発されないドラッグ・ラグ(ロス)の解消にもつながるかもしれません。

(2024年6月19日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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