同意なき転勤

本人の同意のない業務命令の転勤や、長時間労働などが女性の昇進の壁となっている可能性があります。経済財政白書は、労働政策研究・研修機構やリクルートの調査から国際比較し、日本の雇用の特徴の一つに転勤のあり方を挙げています。日本の労働者のうち、本人が同意しなくても業務命令で転勤する状況にある人は18.8%もいます。米国とデンマークは3%、中国は5.4%、フランスは7.9%です。日本は、職務や勤務地を限定しない雇用契約を結ぶメンバーシップ型の雇用慣行があるためです。子育てといった理由で断れば、昇進などに響く懸念もあります。
長時間働く人も多くなっています。パートタイムを含む労働者のうち、週49時間以上働く人が、日本は15.1%います。14.6%の米国とほぼ同じですが、9.1%のフランスや5.7%のドイツより高くなっています。日本は勤続年数が長いほど、賃金が上がりやすい傾向もあります。勤続1~4年目の給与を100とすると、日本は30年以上働くと171.7まで上昇します。ドイツやイタリア、フランスなどと比べて上昇幅が大きくなっています。日本は、労働時間、勤務地の制約のない労働者の賃金が上がりやすいシステムがあります。
最近では、男性の育児休暇の取得を推奨する企業が増えています。しかし、子育てなどで長時間働きにくい女性を男性と比較し、能力にあった適切なポストに配置しない企業もこれまで少なくありませんでした。ジョブ型雇用の拡大は、男女間賃金格差を縮小する観点からも重要です。

(2023年9月13日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。