大企業健康保険組合の財政悪化

大企業の従業員らが入る健康保険組合の財政悪化が鮮明になってきています。健康保険組合連合会(健保連)によれば、全国約1,400組合の2024年度予算ベースの経常収支は、合計で過去最高の6,578億円の赤字を見込んでいます。赤字額はリーマンショック後を上回っています。高齢者医療への拠出金の増加が響いています。少子化対策財源への拠出も加わり、現役世代に負担が偏る構造の改革が急務です。
高齢化の影響で、2024年度は拠出金が前年度比5%増の3兆8,774億円に膨らみます。このうち75歳以上の後期高齢者向けは、2兆2,769億円と4%増えます。健保組合の加入者への医療費支払いは、5兆756億円と6%増えます。従業員の平均年齢が上昇し、生活習慣病などに罹りやすくなっていることが一因です。医療の高度化で、高額な治療法や医薬品が広がった影響もあります。
支出の増加に対し、加入者からの保険料収入は、8兆8,851億円と4%増にとどまります。支出が収入を上回り、赤字を見込む組合数は1,194と前年度から103増えます。赤字組合は全体の9割弱にのぼります。収支悪化に伴い、健保組合が加入者に課す保険料率を引き上げる動きが広がっています。2024年度に料率を引き上げる組合数は150にも達します。全国の健保組合の保険料率は平均9.32%と、前年度から0.05%上昇する見通しです。
健保組合が解散を検討する保険料率の目安は10%とされています。中小企業の従業員らが加入する全国健康保険協会の料率が10%で、これを上回れば企業が自前の健保組合を運営する意味が薄れるためです。厳しい財政状況が続けば、解散する健保が増える可能性があります。

(2024年4月23日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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