子どもの権利に関する条約

子どもの権利に関しては、歴史的には1924年の「子どもの権利に関するジュネーブ宣言」に始まる。このとき初めて脆弱な子どもの権利についての裏付けがなされた。

1959年に国際連合総会で採択された「児童の権利に関する宣言」において、子どもに対して特別な保護を与えることの必要性が述べられている。特に児童はその母から引き離されてはならない(第6条)、児童はいかなる形態においても売買の対象にされてはならない(第9条)という2つの条項は、代理懐胎における子の立場を考えるとき、その意味を深く考える必要がある。

1989年11月20日国連総会において、児童の権利に関する条約(いわゆる子どもの権利条約)は、18歳未満のすべての人の保護と基本的人権の尊重を促進することを目的とし、採択された。日本は1990年にこの条約に署名し、1994年に批准している。この条約は、世界中に貧困、飢餓、武力紛争、虐待、性的搾取といった困難な状況に置かれている子どもがいるという現実に目を向け、子どもの人権を国際的に保障、促進するために成立したものである。その第7条において「子はできる限りその父母を知り、かつ父母によって養育される権利を有する」と規定している。この規定が精子や卵子あるいは胚などの提供による生殖補助医療によって生まれた子が、遺伝的な父や母を知る権利を有することまで認めたものであるかは明確ではないが、子の立場からみれば真実を知る権利として確立されているとも考えられる。

第9条において「子どもがその父母の意志に反してその父母から分離されないこと」、また第21条において「養子縁組は権限のある当局によってのみ認められ、関係者に金銭上の利益をもたらすことがないことを確保することを」と述べられている。商業主義的代理懐胎の実施は、これらの宣言や条件に明らかに反することになる。この子どもの権利条約は代理懐胎で生まれた子どもにも適応されるべきであり、法的にも倫理的にもこれら子どもの権利が守られるように配慮すべきである。

(吉村やすのり)

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