子どもを持つことの所得格差の広がり

厚生労働省の2022年の国民生活基礎調査によれば、児童がいる世帯の所得分布を2011年と2021年で比較すると、600万円未満の世帯が大きく減っています。経済的に余裕のある世帯は多くの子どもを作り、子どもを持てない人との二極化が進んでいます。子どもを持つかどうかが、所得に左右される傾向が強まっています。
特に男性は所得が低いと結婚しにくい状況になります。総務省の2022年の就業構造基本調査によれば、年収500万円未満の男性は、2017年の前回調査より生涯未婚率が大きく上昇しています。日本では男性が主たる稼ぎ手となり、女性が主に家事育児をするという性別役割分業の意識が強く、男性の賃金が上がらない中で、経済的な観点から結婚相手として選ばれない傾向が強まっている可能性があります。出生動向基本調査によれば、独身男性が結婚相手に求める条件に経済力を挙げる人は、1992年調査の26.7%から、2021年は48.2%へと大幅に増えています。
これまで高学歴女性は仕事と育児の両立が困難でしたが、この数年で大企業では両立支援などが進んできています。女性への負担の偏りやキャリア形成などの課題をなお残しつつ、以前より産みやすい環境が整ってきています。少子化の最大の要因は、経済や雇用環境から、結婚や出産が難しいと考える人が増えています。そもそも第1子にたどり着かない人達の支援として、男女とも低所得の人の賃金をどう上げていくかが大切になります。
子供を持つことの所得格差が開く背景の1つには、女性が男性に経済力を求めていることもあります。それには子供を持ってからの働き方も影響しています。妊娠・出産した後も仕事を続けられ、働き方もキャリア形成にも男女差がない社会なら、男性に求める経済的水準も下がっていくはずです。企業が変わり、労働環境を整えていくことが大切です。

 

(2023年9月7日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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