学び直しの必要性

人生100年の時代となり、終身雇用が主だった雇用形態も、職務に応じたジョブ型が広がっています。企業が職場内訓練で人材をじっくり育てることは難しくなり、長く働くには学び直しによるスキル向上が欠かせなくなりつつあります。学び直しの先進地であるスウェーデンは、1974年に教育休暇法を制定しています。自治体が社会人向け教育機関を運営し、無償で授業を提供しています。
日本も、1992年に国の生涯学習審議会が大学での社会人受け入れ拡充を求めました。しかし終身雇用制度の下で、大学に通うのは人生一度が続いています。入学者の平均年齢は18.5歳と、OECD諸国で最低水準です。産業構造の変化が遅れている中、大学や大学院で挑戦し直す可能性が広がらなければ、社会はますます硬直化し、日本企業が世界の潮流から取り残されてしまいます。
政府は、学び直しをする個人や支援する企業に、5年で1兆円を助成しています。民間の研修会社が、スキルの習得講座を機敏に提供する中で、大学が存在感を示すには蓄積した研究の成果など強みを生かすしかありません。
社会人5千人が対象の文部科学省の2019年度調査によれば、学び直しをしたことがあると答えた33%のうち、大学や大学院を活用したのは1割台に過ぎません。国費が入る大学は、教育資源を社会の需要に合わせて提供する責任があります。大学の18歳中心主義からの転換は待ったなしです。

(2023年8月10日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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