家族像の多様化

1960年代、人手不足に陥った都市部に地方から若者が流入しました。多摩ニュータウンなど都市郊外に大規模団地が建設され、核家族化が進みました。会社員の夫が家計を支え、妻が専業主婦として家庭を守る家族像に基づき、社会保障・税制や住宅政策が整備されました。
第2次ベビーブーム期の1973年に、合計特殊出生率2.14、出生数約209万人に達しましたが、1989年には、1.57ショックと呼ばれる戦後最低の出生率を記録しました。1969年の政府の人口問題審議会は、わが国の出生力、人口再生産力は、人口学的基準からみて下がり過ぎていると警告しています。
1990年代に入ると、共働き世帯が専業主婦世帯を上回るようになります。子どもが結婚せず、親に依存するパラサイト・シングルも話題となりました。2022年の出生数は過去最少の77万人まで減少しました。それでも、昭和の家族像が社会の安定と結びつくイメージは根強いものがあります。結婚して子どもを育て、マイホームを買うことが、豊かさの象徴という価値観が中高年層に共有されたままです。
しかし、もはや昭和ではありません。2022年版の男女共同参画白書は、制度や慣行の見直しを促しています。年金の標準的な給付水準を示すモデル年金も、会社員と専業主婦世帯だけでなく、共働きや単独世帯などの額も公表する方向で検討が始まっています。

(2024年1月13日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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