家族形態の変化

戦後日本の基準は家族でした。1978年の厚生労働白書には、同居は我が国の福祉における含み資産との記述があります。当時は高齢者の約7割が子どもと同居し、面倒をみるのが当たり前とされていました。経済的成功が改革意欲をそぎ、家族モデルが固定されてしまいました。女性の社会進出の遅れは、失われた30年の要因にもなりました。
しかし、家族の姿は半世紀で一変しました。2020年の国勢調査では、単独世帯が一般世帯の38%を占めています。サザエさん型の3世代同居は、4.1%に過ぎません。家計調査が標準世帯としていた夫婦と子ども2人は、1割を切っています。非婚化が進み、およそ3組に1組が離婚し、死別後も長い人生が待っています。
日本の高齢化率は29.1%で、世界のトップです。世界に先んじて少子高齢化と人口減が進んでいます。昭和の家族像を脱し、誰もが安心して暮らせる日本モデルを確立することは、同じ課題に直面する世界の道しるべとなります。大切なことは、個を孤に変えない社会づくりです。

(2024年1月13日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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