希望出生率1.8の実現

人口の維持には、女性1人が生涯に産む子どもの数である合計特殊出生率を、人口置換水準である2.07を保つ必要があります。2015年に政府は、1.8の実現を当面の目標としました。結婚し子が欲しい夫婦の希望をかなえる目安としましたが、日本の出生率は2016年から低下が続いています。新型コロナウイルス禍に伴う婚姻減なども響いて、2022年は1.26と2005年と並び過去最低でした。
出生率は総じて西日本が高く、国が毎年公表する都道府県別では、2022年に沖縄県の1.70、宮崎県の1.63が上位でした。市区町村でも希望出生率1.8以上を2015年から8年続ける10市町村は鹿児島県徳之島町など全て九州・沖縄です。東日本では山梨県忍野村の1.92、北海道共和町2.05が7回達成しています。2022年には、92市町村が希望出生率1.8を達成しています。
大都市が多い関東では、政府が掲げる希望出生率1.8を達成する自治体はほとんどみられません。しかし、いち早く子育てしやすい環境を整え、子育て世帯から人気を集める自治体も少なくありません。子育てのまちのイメージがさらなる移住者を呼び寄せ、人口増で増加した税収を子育て支援に充てるといった好循環が起きています。
高水準の出生率を保ち続ける自治体は、立地企業との連携や宅地開発、教育拡充などにより子育て世帯が暮らしやすい環境を整えています。結婚・出産に経済的要因は無視できません。安定した職は出生率の高さにつながります。日本全体の成長力や働く人の可処分所得を増す政策の推進も大切です。

(2023年12月2日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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