広がる出生前診断

妊婦が高齢になると、染色体などに異常がある子どもが生まれる確率が増えてきます。そのため、胎児の染色体異常を生まれる前に知る検査、いわゆる出生前診断が実施されるようになっています。出生前診断には超音波検査(エコー)など広く行われていますが、近年では胎児やその前の受精卵の段階で遺伝子を調べることも技術的に可能になっています。昨年から一部の医療機関で始まった新型出生前診断においては、母親の血液に含まれる胎児の遺伝子情報から、ダウン症(21トリソミー)や1813トリソミーの染色体異常の有無を調べています。しかし、この検査で異常の可能性を指摘されても、確定診断には子宮に針を刺し羊水を抜いて調べる羊水検査が必要となります。

 日本産科婦人科学会では現在、受精卵の段階で遺伝子を調べ、異常のない受精卵を母親の子宮に移植する着床前検査(スクリーニング)を臨床研究として行うことを倫理委員会で決めました。繰り返し流産する女性などに限って、その適用が検討されています。遺伝子情報が素早く解析できる次世代シーケンサーなどの登場で検査精度が上がっただけでなく、将来かかる恐れがある病気の情報までわかるようになってきています。これにより、どの遺伝子異常を検査対象とするのか、異常がわかっても治療できない場合は中絶するのかなど、新たな倫理面の課題も生まれています。

(2014年12月7日 産経新聞)
(吉村 やすのり)

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