慢性硬膜下血腫

 慢性硬膜下血腫は、軽く頭を打った後などに頭蓋骨と脳の隙間に血液がたまる病気です。血腫が脳を圧迫し、マヒや頭痛に加え、時には認知症のような症状を伴うことがあります。患者は高齢者に多く、物忘れや意識障害、不自然な行動などの認知症の症状が出ても、加齢のためと見過されやすいため、すぐには気づかず12カ月たって発症する人が多くなります。冷蔵庫の扉を開けた時に頭を軽くぶつけたといった日常生活の中の軽い怪我でも発症の引き金になります。
 患者が高齢者に多いのは、加齢で脳が委縮して頭蓋骨との間に隙間ができ、血液が染み出しやすくなるためです。最近では脳梗塞の予防などのために、血液を固まりにくくする薬を服用している人も多く、軽い怪我で血管が破れると発症しやすくなっています。高齢者の場合、年間1万人に1人の割合で発症しているとみられ、高齢化の進行に伴って患者が増えつつあります。症状は手術で改善できます。手術は頭蓋骨に小さな穴を開けて、チューブでたまった血の塊を吸い出してから生理食塩水で洗います。30分程度で済みます。多くの患者は、診断当日に手術を受けて2、3日で退院することができます。治療をすれば治りますが、気づいてもらえない患者がいることが問題です。CTを撮れば簡単に診断できます。

(2016年7月17日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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