所得による教育格差

教育サービスに値上げの波が押し寄せています。教材などの原材料費や光熱費の高騰に加え、人件費が上昇しているためです。各社は値上げと同時にサービスの付加価値向上や時給アップによる人材確保などを急ぎ、価格に見合う価値の提供に知恵を絞っています。実際、塾講師のアルバイト時給は上がっています。
民間調査会社の矢野経済研究所によれば、2022年度の教育産業全体の市場規模は、前年度比1.7%増の2兆8,882億円となる見込みです。文部科学省の調査によれば、18歳人口の減少に伴って、大学入学者数も減少傾向にありますが、新型コロナウイルス禍を経て市場規模は拡大傾向にあり、教育サービスへの底堅い需要がうかがえます。

教育費は所得階層による差が広がっています。総務省の2022年の家計調査年報で、塾などの補習教育の支出を見ると、平均は月額4,749円です。所得階層を5つのグループに分けると、最も低いグループの支出は月1,239円にとどまる一方で、最も高いグループは月1万480円と平均の2倍以上になっています。高所得世帯の教育費を押し上げる要因の一つが、首都圏で過熱する中学受験です。森上教育研究所によれば、2023年の首都圏1都3県の公立小学校に通う6年生の中学受験率は15%で、リーマン・ショック前の2008年を超えて過去最高になっています。

 

(2023年8月29日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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