新しい移行期医療の考え方

医療の進歩によって、がんや心臓病などの重い病気にかかった子どもの命が救われるケースが増えてきています。そうした病気を経た人は大人になっても小児科にかかり続けることが多く、成人特有の病気が適切に対処されなかったり、大人を診る診療科へ移ろうにも受診先に迷ったりすることがあります。子どもの時に大きな病気をした人を、小児期から成人期の医療へとスムーズにつなげていくのが、移行期医療です。
移行期医療には、3つのパターンがあります。①成人診療科に移る、②小児科と成人診療科の両方を受診する、③小児科にかかり続けるです。成人診療科への受診について、不安・困難なことがあるとの不安を訴える人は6割を占めています。移行期医療を進めるためには、小児科と成人診療科が連携できるような態勢づくりや、患者・保護者への支援が必要となります。厚生労働省は、それらを担う移行期医療支援センターの設置を各都道府県に促していますが、8都道府県にとどまっています。
日本小児科学会は、移行期医療の考え方をさらに発展させた成人移行支援を推進するための提言を発表しています。成人後の医療の受け皿を整えるだけでなく、患者がその人らしく生きるため、健康や福祉なども含めた長期的な視点で支援を進めるべきだとしています。提言は、小児科医向けで計20項目からなっています。患者が10代の早い時期から個々に応じた移行の計画を立てる、患者が携帯できる医療サマリーに治療歴などをまとめ、活用してもらう、成人診療科に移っても、6カ月程度を目途に受診が継続されているかなどを確認するなどです。

(2023年8月30日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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