新型出生前遺伝学的検査(NIPT)の3年間の結果

 新型出生前診断は、妊婦の血液を用いダウン症などの染色体異常を調べる検査です。NIPTは十分な情報がないまま中絶が広がれば、命の選別につながりかねないとの指摘もあり、適切な遺伝カウンセリング体制を整備するなどの目的で臨床研究として、20134月に始まりました。対象となるのは、他の検査で染色体異常が疑われるケースや出生時の年齢が35歳以上の妊婦で、20万円程度の自己負担がかかります。新型出生前診断の臨床研究を実施している病院グループ(NIPTコンソシアム)が、導入から3年間の計3615人の検査結果を集計しました。そのうち1.8%に当たる547人が、陽性と判定されました。確定診断のため、おなかに針を刺して採取する羊水検査などで染色体異常が確定した417人のうち、94%にあたる394人が人工妊娠中絶を選択していました。
 陽性と判定され羊水検査を受けた458人のうち、91%にあたる417人が染色体異常と診断されました。しかし、偽陽性が41人にみられ、9.0%を占めていました。陽性と判定されたうち89人は羊水検査を受けませんでしたが、その多くは死産になった症例です。しかし、13人は研究から離脱し、羊水検査を受けることなく人工妊娠中絶を選択しています。NIPTでは約1割に偽陽性が認められることからも、羊水検査などによる確定診断を受ける必要があります。現在、臨床研究としての目的は終了したとして、一般医療への応用が考えられていますが、臨床研究の目的であったNIPTの遺伝カウンセリングに関する検討が十分に出来ているとは思われません。羊水検査を受けずに中絶を選択するケースや、異常があっても中絶を選択しなかったケースに対する考察が大切となります。さらに遺伝カウンセリングを受けることによって、検査を受けることを止めたカップルについても検証が必要となります。

(2016年7月17日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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