日本の新生児死亡率の低さ

新生児とは、生後28日未満の時期の赤ちゃんのことを指します。日本の新生児死亡率の低さは、世界トップクラスです。人口動態調査によると2021年の1,000人出生数あたりの新生児死亡率は0.8です。2001年の新生児死亡率が1.6だったので、20年で半減しています。元々低かった新生児死亡率がさらに下がり続けています。一方、早産児や低出生体重児の割合には大きな変動はありません。ここ20年の早産の割合は5.7~5.8%程度、低出生体重児の割合は9%程度で横ばいとなっています。
その要因の一つは、ハイリスク妊婦の集約化が進んでいることが考えられます。新生児臨床研究ネットワークの調査データをみると、出生後に他院から搬送された赤ちゃんのアウトボーンの件数は年々減少しています。これはハイリスクな妊婦を出産前からNICUがある周産期医療施設に紹介し、そこで出産ができているということを意味しています。こうした支援は、新生児死亡率の低下や出生後の予後改善などに確実に寄与しています。
新生児の死亡原因を見ると、日本では先天性疾患によるものが多く、他国と比べて早産によるものが少ないのが特徴です。様々な理由が考えられますが、母子健康手帳を含め世界的に評価されている日本の妊婦健診システムが、早産の予防にも有効に機能していることが理由の一つとして考えられます。
近年の傾向として、これは新生児に限らないことですが、日常的に人工呼吸器や胃ろうなどを使用し、痰の吸引や経管栄養などの処置を必要とする医療的ケア児が増加しています。現在、新生児だけでなく小児も含め全国に約2万人の医療的ケア児がいると推計されています。医療的ケア児の多くが、NICUで管理された経験がある子です。生まれた時からしっかり管理できることで助かる命が増えてきています。

(母子保健 2023年11月号)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。