未婚率とひとり死の増加

未婚率が上昇し、2050年には30万人を超す人が、生涯結婚しないまま亡くなる見通しです。ほぼ5人に1人がひとり死を迎えることになります。みずほリサーチ&テクノロジーズの試算によれば、未婚で亡くなる65歳以上の人は、2050年で約32万人となり、2020年に比べ4.1倍に増えることになります。高齢者の総死亡数に占める割合は18.1%と、3倍弱の水準となります。
背景には未婚率の上昇があります。国立社会保障・人口問題研究所によれば、50歳時点での男女の未婚率は、1990年で4~5%、2020年には男性で28.3%、女性で17.8%に高まっています。経済力や子育てへの不安、女性の社会進出、生活の利便性向上など様々な要因から、結婚して当然の意識が薄れています。
5人に1人が、ひとり死に至れば、社会や慣習への影響は小さくありません。孤立は認知症や孤独死のリスクを高めます。同研究所の2022年の調査では、一人暮らしの高齢男性の15%は、2週間以内の会話が1回以下にとどまっています。女性の3倍、高齢夫婦世帯の5倍です。特に男性は地域との接触が少なくなっています。
未婚者の終活で特に問題になるのが男性です。1990年ごろから女性よりも生涯未婚率が高くなり、現在は50歳時点で3~4人に1人が未婚となっています。高齢男性が亡くなる時は、従来妻子などの家族が介護や家財整理を担うことが多くなっています。しかし、2050年ごろには、単身で介護が必要な80歳前後の男性が増えます。遺体を引き取る人がいないケースも増えそうです。対策として第1に重要なのは、自立して生活できなくなった後に自分がどうしたいかを考えておくことです。介護保険制度に続き、家族に頼らない福祉制度をさらに発展させるべきです。

(2023年12月25日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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