未婚率を上昇させないためには

2023年度の年次経済財政報告(経済財政白書)によれば、日本の少子化について、①女性人口の減少、②非婚化の進行、③夫婦の出生率の低下が三重の要因となって進行していると分析しています。このうち非婚化が進む背景として、賃金水準の低さや男女の賃金格差が影響している可能性があると指摘しています。
所得が低いほど未婚率が高い傾向がみられます。所得の低い200万円台の層は64.7%、100万円台で76.3%です。年収800万円以上の層では17.3%、600万~700万円台で21.4%と、相対的に低い水準にあります。所得階層によって最大4倍超の差が出ています。こうした傾向は、2012年、2017年の調査でもみられています。構造的な賃上げの実現などで、若年層の取得向上を図ることが結婚を増やすのに重要になります。
結婚時に夫に高い年収を求める傾向につながっています。共働きの世帯が増えても、現状では子育てや家事の負担は、女性に偏りがちなことが背景にあります。所得の多い女性が、さらに高い年収の男性を結婚相手に求める傾向もあります。
育児による時短などの影響が出ないよう子どものいない共働きの女性でみると、年収が1,000万~1,499万円の場合、自身が夫より年収が多い割合は33%にとどまっています。逆に収入が同水準の男性の96%は、妻より年収が高くなっています。賃上げなどで所得を底上げし、男女の賃金格差を縮めることが結婚につながる可能性があります。出産後の女性の所得減を抑えることが、女性が結婚相手に求める年収の低下につながり、結婚へのハードルを低くすることが期待されます。

(2023年9月5日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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