東京に再び集う企業

東京に集まる企業が増え続けています。23区への転入社数は2023年に前年から13%伸び、転出超過幅はコロナ禍前の2019年以来の低水準となっています。経済の正常化で対面の仕事が戻る流れで、都心の利便性が見直されています。オフィス需給の緩みも呼び水となっており、再び東京一極集中の兆しが出ています。
2023年1~8月に、のべ3,805社が東京23区に本社機能を移しています。転入数は、2019年比で28%増えています。特に目立つのは、やはり対面の仕事が多い企業の流入です。東京商工リサーチの分析によれば、2023年にサービス業は142と、2022年から21ポイントも高まっています。不動産業も136、小売業も135とそれぞれ13ポイント拡大しています。地域別では、大阪府からが2023年に306件と2022年比で30%増え、愛知県からは118件で26%伸びています。
東京は、戦後資本と労働力を吸い寄せてきました。コロナ禍がその流れにくさびを打ちました。地方の再評価が進み、企業がむやみに都心を目指したり留まったりすることはなくなりつつあります。都心からの転出はいまだ多く、企業の立地戦略が多様化しているとも言えます。
しかし、経済合理性に基づいて動くのが企業です。集積は効率を高め、イノベーションを促すメリットもあります。一極集中の緩和を目指す地方創生など行政の取り組みが、ほとんど成功してこなかったのも半ば当然と言えます。経済活動の再開で、より市場規模の大きい東京に拠点を置くビジネスモデルに戻りつつあります。
2023年に東京に流入したうち大半は、従業員50人以下の企業でした。規模が小さい分、身軽に動ける面もあります。都内が拠点の企業の間でも、好立地を求める動きがあります。背景には人手不足があります。より利便性が高いビルに移転することで優秀な人材を呼び込もうとしています。

(2023年11月12日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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