法定親子関係と認知

法的な親子関係が認められると、親は経済的に自立していない子どもを扶養する義務を負うことになります。父母が離婚しても、親子関係はなくならず、別居親は養育費を支払う義務があります。遺産相続にも関係します。民法は、子どもを親の相続人と定めています。相続の優先順位も配偶者に次いで高くなっています。法的な親子関係がないと、子どもはこうした権利を得られません。
一般的に、母子関係は母親の出産の事実によって確定します。父母が結婚していれば、特に手続きをとらなくても父子関係が認められます。婚姻中の妻が妊娠した子の父親を夫とする民法の嫡出推定の規定があります。
結婚していない父母に子どもが生まれた時は、父子関係を確定させるための認知という手続きがあります。市区町村に認知届を提出する必要があります。父親が認知に同意しない場合は、子ども本人や子どもの代理人である母親が、裁判所に申し立てることができます。
性的少数者のカップルに子どもが生まれた場合は、第三者から精子を提供してもらい、生殖補助医療を利用するなどして子どもをもうけるケースがあります。最高裁は、2013年に女性から性別変更した男性と結婚した女性が、第三者から精子提供を受けてもうけた子について、男性の子と認めています。男性と子に血縁関係がないことは明らかですが、こうした場合でも嫡出推定を適用し、親子関係を認めるべきだと判断しています。
しかし、出産した女性のパートナーが女性の場合、結婚できないために嫡出推定が働かず、親子関係は自然には認められません。子どもを産んだ母親が亡くなった場合、残ったパートナーが親として引き続き子育てできるのか、不安に思う当事者も多くなっています。

(2024年6月22日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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