生殖医療を考える―Ⅴ

提供の対価
第三者を介する生殖補助医療においては,提供の対価も問題となる。配偶子の提供、特に卵子の提供に対しては、姉妹や友人でなければ無償での実施は極めて困難であると思われる。また代理懐胎においては、妊娠と分娩という長期間にわたって女性を拘束することになり、経過中の医療補償を含め、対価が必要なことは容易に想像できる。しかしながら、配偶子提供や代理懐胎における対価の支払いは生殖ビジネスにつながり、結果的に「人を専ら生殖の手段として扱う」ことになってしまうことが懸念されている。こういった医療を考える時、有償すなわち悪とするのではなく、一定の対価が必要となる場合もあるといった現実的な対応も考慮すべきである。それによって、無秩序で商業主義的な実施がかえって回避できるのではないだろうか。

(生殖医療の必須知識2020)
(吉村 やすのり)

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