異種移植の可能性

異種移植に世界的な関心が注がれる背景には、現在の臓器移植をめぐる長年の課題があります。世界で最も移植が盛んなスペインでは、2022年に人口あたりで日本の約50倍の脳死や心停止の臓器提供がありました。100万人あたり約46件で、日本は0.9件に過ぎません。米国でも、人口あたりでスペインとほぼ同じ数の提供があります。ドイツは日本の約11倍、韓国は約9倍、中国でも約4倍の臓器提供があります。
しかし、そんな各国でも、移植を待つ人が多い状況は変わらず、待機中に亡くなる人も少なくありません。米保福祉省によれば、米国の移植の待機リストは10万人以上にのぼります。8分ごとに新たな待機者がリストに登録され、毎日17人が亡くなっています。
ブタからヒトへの異種移植が最も進んでいるのは米国ですが、ほかの国でも、臨床応用をめざした動きは活発になっています。中国でも、異種移植の研究と臨床応用への関心は、非常に高まっています。研究の一環として、脳死者へのブタの肝臓移植なども報告されています。ドイツでも、心臓移植に注力した研究が、今後本格化する見通しです。ドイツの特徴は、オークランドブタというニュージーランドにいるブタを使う点にあります。

(2024年7月10日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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