矯正医官の不足

 矯正医官は国家公務員で、刑務所や少年院、拘置所などの施設に収容された受刑者や刑事被告人らを診療します。刑務所などで医療行為を担う医師である矯正医官が不足しています。受刑者らの高齢化が進み医療ニーズは高いのですが、定員の充足率は8割を切っています。常勤医がいない施設も2割あります。2003年以降、矯正医官は定員割れが続いています。法務省は民間病院との兼業を可能にするなど待遇改善をはかるほか、医学生へのPR活動を強化するなど確保に懸命です。
 矯正医官不足の背景の一つとして指摘されているのが、2004年度に始まった医師の臨床研修制度です。従来、医学部卒業生は大学附属病院の医局に所属して研修をしていました。医局のトップの教授が人事権を掌握し、若手医師を関係の深い病院や矯正施設、へき地などに送り込んでいました。しかし、新制度では卒業後、自らの希望で研修先を選べるようになりました。この結果、先進的な医療機器を備え、経験も積める大都市の病院を選ぶ傾向が強まり、医師の偏在が深刻化しました。法務省は昨年、矯正医官の兼業を可能にする法律を制定しました。国家公務員であるため本来は兼業できませんが、法務大臣の承認を受ければ可能になります。受刑者が高齢化し、医療の需要は高まってきており、民間病院の力を借りて運営せざるを得ない状況になっています。

(2016年6月8日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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