臓器提供者の不足

国内の臓器提供者の不足を受け、厚生労働省は、移植医療が進まない要因の調査を進めています。2019年度から指導役となる拠点病院を指定し、地域の連携病院に臓器提供に関する技術などを伝える事業に取り組んでいます。
日本の人口100万人あたりの臓器提供者数は0.88人で、米国の51分の1、韓国の9分の1の水準です。国内で臓器移植を希望する登録者は、約1万6,000人いるのですが、1年間で臓器移植を受けたのは、3%の約400人にとどまっています。
脳死判定などに対応できる病院や人材で、地域差も生じています。人口100万人あたりの臓器提供者数で最も多い新潟県が21.6人なのに対し、最も低い秋田県は1.1人に過ぎません。全国に拠点病院は17ありますが、四国などはゼロです。
救急医療の現場では、臓器提供の前提となる脳死判定を患者の家族に提案することをためらうケースも多くなっています。業務が多忙なうえ、家族の心を傷つけない提案方法が分からないことなどが理由です。医療体制の整備と合わせ、臓器提供が可能な患者の家族への説明の機会を増やすことが欠かせません。中高生などに、命の教育の一環として学ぶ場を設けて啓発に取り組んでいくことも、中長期的に必要になります。

(2023年11月29日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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